先日の配信ライブの対バンだったSMAPバンドですが、
バンドの音は事前に録音しておき、本番はそれを流しながらボーカル5人だけステージで撮影、という企画。
"Surume, Motsuni, Ankimo, Prine" BAND/DCTV ch 配信動画
こちらのコーラス・管楽器のRECエンジニアとしてお手伝いをしておりました。
その後、企画が発展して「配信ライブとは別に、きちんとした録音物も残したい」となったので、ボーカルの録音と最終的なミックス~マスタリングまで担当することに。
(スタジオレコーディング版は後日公開予定)
自分の備忘録をかねて、録音からミックスまでの手順・処理内容を記しておきます。
今回は 主に録音当日についてです。
■録音機材
DAW : Cubase Pro10
インターフェイス:Zoom Livetrak L-12
マイク:Shure Beta58 / Beta57
担当したRECは下記パート
・コーラスセクション3声
・ホーンセクション3声
(サックス+トロンボーン+キーボード(音色はトランペット)
・ボーカル5声
当初はそこまでがっちり作りこむ予定ではなかったので、多少の音カブリがあろうともライブ感重視というスタンスで、複数人を同じ部屋の中で同時に録音することにしました。
指向性を考慮してコンデンサーマイクではなく、定番ダイナミックマイクをチョイス。
■録音当日までの下ごしらえ
・各インプット→録音トラックのルーティングは済ませておく
(誰をどのトラックに録音するかも決めておく)
・バックトラック=オケをまとめたバストラックを作っておく。
(マスターのひとつ手前でバックトラックの音量をいじれるようにしておく)
・各録音トラックにはプレイバック時だけにかかるコンプ・リバーブを軽めの設定で刺しておく
(オケになじみやすい状態にしておくと完成形が想像しやすい)
・エフェクトかけ録りはなし
■マイキング
時間の都合上、マイクセッティングは歌い手にお任せ。
マイクからポップガードまで2cm、ポップガードから口まで2cmを指定。
が、人によってはマイク⇔口元15㎝くらいになっていて、そのトラックはカブりが多かった。
録音に入る前に、口からマイクの距離や軸の方向は厳密にチェックしてあげたほうが良い。
ソプラノサックスのマイキングは、最初はオフ気味に楽器の横に立てていたが、音程ごとに音量がかなり上下してしまったので、ベルからまっすぐ楽器の中心を狙うマイキングに変更。
以降、音量が安定。
■ポップガード
コーラス録音時はポップガードを設置しなかったが、吹かれが発生しているトラックがあった(ことに後で気づいた)。
(吹かれ=息がマイクに直撃して「ボワッ」となること)
吹かれが頻繁に起こる人もいれば、ほとんど起こらない人もいる。
やはり、保険はかけたほうが良いので、後日のボーカル録音時はポップガード使用。
■モニターミックス
各マイクの音はインターフェイスからダイレクトモニタリング。
PCからのカエシはバックトラックだけ。
バックトラックは-15~-10dbくらいにしておくと、プレイバックと録音モニタリングのバランスがとりやすい。
ZOOM L-12はヘッドホンアウトが5系統(+メインアウト1系統)あり、それぞれ別のミックスバランスを作れるのが、非常に便利。
エンジニア用ミックス x 1と、演者用ミックス x 最大5人分を作成する手順は下記。
(1)エンジニア用のミックスがA~Eヘッドホンからも出るように設定
(まずは演者も同じミックスを聞く)
(2)ワンコーラス歌ってもらいながらゲイン調整、オケとのバランスを取り、エンジニア用ミックスを完成させる。
(3)エンジニア用設定(各フェーダー位置)をA~Eの各モニターにコピー
(4)A~Eのミックスを個別にバランスをいじれる設定に直す。
(5)まずはヘッドホン音量の大小だけ感想をもらい、それぞれの好みに合わせ歌いやすい音量に設定。
(6)もうワンコーラス歌ってもらい、個別にリクエスト(自分の声だけ大きくしてほしい など)を聞き、A~E別々のミックスを作成
モニター音量、自分の声/他の人の声のバランスは人によって好みがかなり違う。
自分の声がヘッドホンから帰ってくると、発声が小さくなってしまう人がいた。
クリックは鳴らしてあげたほうがリズムが良くなる
■何テイク録るか
今回は最初から最後まで通しで2テイクほど録った後、気になる部分、失敗した部分やソロパートを各3テイクくらい録音。
人によっては、後半バテてしまっていた(無理させて申し訳ない)ので、もっと少ないテイクで録る工夫が必要かも。
特にサビなど高音が続く箇所は、テイク数少な目で決めたい。
■録音環境についての所感
今回、複数の演者と自分(エンジニア)が同じ部屋にいて作業したが、その場での録り音チェックがしづらい。
ノイズやカブリ音、吹かれのチェックは、ターゲット(目的の音)の向こう側の小さい音を聞かねばならないので、できる限り静寂な環境が必要。
また、音カブリは想定の範囲内だった(編集に困るほどではない)が、
やはりブースで一人ずつ録音、エンジニアは別部屋のほうが圧倒的にクリアに録れることを実感した。
いかにノイズレスに録るか、ニュアンスやアタック感をロス無く録るか、を目指すと、そのトラックのオケ内の存在感、太さ・クリアーさが変わってくる。
具体的にはEQやコンプの効き具合、定位の明瞭さが違ってくる。
プロダクションクオリティを高めるなら複数人同時録りはしないほうが良さげ。
次回、ミックスの作業工程。